水を差すわけではありませんが
41歳で銀メダルを獲得した葛西選手のジャンプ。
本当に素晴らしかったです。
この年齢でなおアスリートとして日本の、そして世界のトップランクに位置することは並大抵の努力で出来ることではありません。
心から尊敬します。
ただ、今回の出来事を
諦めなければ夢は絶対叶う
みたいな軽い表現で一般化しないでいただきたいです。
今後新聞やテレビなどで「諦めなか¥った心」を称賛する報道が数多くなされると思いますが、彼は
例外中の例外。
なぜ彼がLEGENDと称されるか。
それは世界中探しても彼のような選手がいないからです。
スキーのジャンプという競技において、あの年齢でピークを維持し、かつ結果を出すことの難しさを選手達自身が良く分かっているからこそ、葛西選手に対する称賛があれだけ集まるのです。
成功者は諦めなかった人。
これは成り立ちます。
諦めなければ成功者になる。
これは必ずしも成り立ちません。いや成り立たないケースの方がはるかに多いです。成功者の陰に無数の破れた夢のかけらが転がっていることをメディアは報道しません。誰もそんなものを見たがらないからです。
もちろん、「だから最初から挑戦するのはアホらしい」などと言うつもりは毛頭ありません。
挑戦するなら本気で何事にも取り組むべきです。ただ、真剣に取り組んでもどうしても結果が出ないのであればどこかの段階で戦略的撤退をするべきだ、とずっと言っています。
葛西選手はただ無謀にチャレンジしていたのではないでしょう。自分なりの勝算があったからこそあれだけの長期間、心が折れずに挑戦し続けられたのだと思います。
「チャレンジを続けている自分が大好き」で、「続けること自体に価値を見出している人」は別にいくつになってもそれをやり続ければいい。ですが結果を望むのであればチャレンジの仕方、挑戦する期間などは綿密に吟味する必要があります。
勝算もなく実は願望だけで続けている人。
「本当は自分には無理だろうな」と気付いている人。
現実と向き合うのは非常に心が痛みますが、チャレンジに破れることは別に人間性を全否定されているわけではなく、「あなたの才能は別のところにありますよ」というメッセージでもあります。
自分の能力、体力、時間などリソースは有限です。
自分で「無理だ」と心の底から感じたのであれば世間一般で言われる「諦めない心」とか「ブレない」とかいうキャッチフレーズに惑わされることなく別の道へ進む決断を下すべきだと思います。