省いていい手間 悪い手間
■省いていい手間
「譜面や音源をネットにアップして、メンバーにダウンロードしてもらう」
最近はそんなスタイルが当たり前になってきました。
音源や譜面を人数分用意する手間。それを送る手間、それにかかる費用。ネットを活用して時間もお金も節約出来るようになりました。
こういう効率化は「良い手間の省き方」です。
■省いてはいけない手間
専門学校で教えていた時に学生とこんなやり取りがよくありました。
「先生、このドラマーのこのフレーズはどうやって叩いているんですか?」
「ほう、結構難しいね。Youtube動画チェックしてみた?どんな風に叩いてた?」
「あ、まだチェックしてません」
「お前なぁ…」
みたいなやり取り。
先生苦笑い、みたいな。
「分からないことを人に聞く」というのは別に間違っていません。
ただ
「自分で調べ、自分で考えたけれど、分からなかったので先生に聞いた」
というのと
「調べる(考える)手間を省くために先生に聞いた」
ので意味合いが全然違います。
■「手間」という誤解
「でもあれこれ考えて時間をかけてたら時間がもったいないし、答えにたどり着かなかったら時間の無駄じゃないですか。先生に答えを聞いて無駄な時間を省いて、その分練習に充てた方が良くないですか」
という意見。
もっともらしく聞こえますがこの人は大きな誤解をしています。
そもそもドラマー(というかミュージシャン全般)にとって、音楽を見て(聴いて)、プレイを解析する能力というのは『必須のスキル』であり、プレイを解析するために試行錯誤するプロセスは省いていい「手間」などではありません。むしろそこにどんどん時間をかけて深く深く掘り下げて欲しいくらいです。
答えが出たのであれば素晴らしいし、答えが出なくても悲観することはありません。そこであれこれ考えたことで音楽家として大きく成長しているのですから。
先生に答えを聞けば、その場はそれで解決するでしょう。
けれど我々は常にみなさんのそばにいて答えを教えてあげられるわけではありません。
みなさんはいつか独り立ちして一人のミュージシャンとして歩んで行く存在です。分からないフレーズが出てきても、もう優しく教えてくれる先生はそばにいません。
だからこそ出来るだけ早い段階でプレイを解析する能力を鍛えておくのです。
それには徹底的に自分のアタマで考えるしかありません。
答えを導き出すのはとても時間がかかる作業です。苦痛を伴うかも知れません。けれどそれを乗り越えた時にあなたは大きく成長したことを実感すると思います。
■最後に
先生がもし「もう少し自分で考えてごらん」と言ったらそれは意地悪で言っているのではありません。それを自分のアタマで考えることがあなたにとって必ずプラスになると思うからこそ、そうアドバイスしているのです。
分からないことにぶつかったらそれは成長するチャンスです。答えをすぐに知りたいところをグッと抑えて、なんとか自力で行けるところまでいってみてください。
それでもどうしても分からなければその時初めて先生に聞きに来てください。
単に答えを教えてもらうだけの時と、自分で試行錯誤した上で先生に答えを教えてもらった時とではアドバイスが全然違って聞こえると思いますよ。