「音楽でメシを食う」ということ(その2)
■ドラマー冬の時代
現在はドラマーには非常に厳しい時代です。ドラムはレコーディングにおいてはまず真っ先にコンピュータに置き換えられてしまうパートだからです。
ドラムを録音するにはそれだけ多く予算が必要とされます。
ドラムはさすがに自宅で録音するというわけにはいかないので、プロ仕様のレコーディングスタジオで録ることになります。当然高額なスタジオ代がかかります。
プロのドラマーに頼むのですから当然ギャラが発生します。
スタジオ機材はプロ仕様ですから素人エンジニアでは対応出来ません。きちんとしたプロのエンジニアを雇うことになります。
打ち込みであればコンピュータの中だけで完結するので比較的低予算での制作が可能となりますが、生ドラムを録るとなっただけでウン万、ウン十万の金額が出て行くため予算が厳しい現在の音楽制作の現場においては生ドラムのレコーディングをする余裕がなかなかないというのが実情です。
本来であれば制作サイドには妥協して欲しくない部分なのですが、そうも言っていられない大人の事情がありますので今後もこの流れは続くと思います。
※それでもどうしても生ドラムを録りたいという場合はどうするか
ミュージシャン、エンジニア、スタジオそれぞれが価格を下げて請け負うことになります。知人から頼まれたレコーディングなどではよくやります。
■演奏家の種類と仕事内容
【種類】
・フリー
完全なフリーの人とエージェントに所属する人に分かれます。
完全なフリーの人はスケジュール管理、ギャラの交渉、経理手続なども含めて全て自分でやります。エージェント所属の人はその辺りの事はエージェントがやってくれる代わりにその分のパーセンテージを支払います。
・バンドマン
バンドで事務所などに所属している人。通常は給料制。バンドが事務所をクビになると強制的にフリーのミュージシャンになります(笑)。その時点で踏みとどまって頑張る人と荷物まとめて田舎に帰る人に分かれます。
・ハコバン
お店と一定期間契約して演奏するバンドのドラマー。ギャラは一晩いくらとかが多いのかな?(未経験なので分かりません)契約期間中は安定して仕事があります。
【仕事内容】
大きく分けてレコーディングとライブの仕事に分かれます。どちらにも難しさがあります。
・レコーディング
呼ばれて譜面渡されていきなり知らない曲を叩かされて短時間(2~3時間)で完了しなければならない。
と、書くとおっかないですが、私はこんな恐ろしい現場は経験したことがありません(笑)。
ほとんどの場合事前にデモ音源を渡され、簡単な譜面をもらえるので予習出来ます。ただ、念入りに予習し過ぎてデモ音源のパターンとかフィルとかをコピーしてしまうと「あ、そこは仮で打ちこんだだけなんでカッコよく変えちゃってください」とか言われてコケる(笑)。だからほどほどに覚えていくようにしています。
面白かったのはドラムは打ち込みでそれに合わせてシンバルだけ生で叩くというレコーディング。20年前はまだ打ち込みではシンバルの質感が上手く出せなかったのでこういう手法も取られました。今は音源のクオリティが上がったので全く必要なくなりましたが。
・ライブ
お客さんの前で演奏するお仕事です。リハーサルを何日かやって本番がある、という流れ。
事前に譜面と音源を送ってもらってある程度予習しておきリハーサルを迎えます。そこでアンサンブルのチェックとか打ち込みとの演奏のバランスをチェックしたりします。ライブ用にサイズを変更したりなどもリハ中にやったりします。
リハーサルは練習とは違うので「演奏は出来て当たり前」でそれ以外の部分のチェックという意味合いが強いです。
私はリハは数日というケースが多かったですが少ない時は1日だけということも当たり前のようにあります。
曲数は現場によってまちまちで1~2曲の時もあれば数十曲という時もあります。一番多かったのは水木一郎さんの還暦ライブ。還暦(60歳)の記念ライブなので曲数が60曲。死ぬかと思いました(笑)。
・その他(当て振り)
歌番組などで流れる音楽に合わせて演奏しているフリをすること。
プライドを持って仕事をしているミュージシャンの方達の中にはこれを嫌う人もいます。
ちなみに私は大好きです(笑)(だって面白いんだもん。CD完コピするというチャレンジのし甲斐があるし)。
実際の演奏力よりも見栄えなどが優先されたりするので若い専門学校の学生がやったりすることもあります。
(その3へつづく)