求められるモノ
■ミュージシャンに任されていること
プロの現場では市販のドラム譜面のようにびっしりと音符が書いてある譜面を渡されることはめったにありません。
そういう現場もあるでしょうが私は過去一度もそういった譜面を渡されたことがありません。
これはどういうことかと言うと、演奏についてはある程度ドラマーである我々の自由裁量に任されているのです。
要するに
「こことここは決められた通りに叩いてください。でも後の部分はあなたの好きに叩いてください」
ということです。
『基本パターンは一応デモ音源にある程度忠実に。でもフィルは変えて結構です』
とかはよくあります。
『デモ音源はメチャメチャラフに打ち込んだんでぇ、もうぜ~んぜん気にしないでドラマーさんがカッコよく変えちゃってくださ~い』
なんて依頼もあります(笑)。
■クライアントの意向が絶対
ただ
「あなたの好きに=好き勝手に」
ではありません。
どんな制作現場にもクライアントがいて「クライアントの意向(※)」を無視した演奏は出来ません。
※実際はディレクターやプロデューサーやアレンジャーなど現場を仕切っている人の意見
「あなたの好きに」というのはあくまでも
『クライアントの意向に沿った上で、あなたが考える一番カッコいいドラム』
ということです。
だから自分では最高のテイクを決めたと思っても、クライアントが首を縦に振らなければOKにはなりません。
自分ではカッコいいと思っていても「ちょっと違うんだよなぁ...」とか言われると脇汗が止まらなくなります(笑)。
■出来て当たり前の世界
プロとしてはまずは「相手が求めている最低ラインはクリアすること」がマストとなります。
これが出来ればひとまず合格点なのですが、やはり制作側の人達(クライアント)はいつもプラスアルファを求めています。
正確さだけを求めるなら今ならドラム音源を使えば簡単に打ち込みで実現出来ます。にもかかわらず彼らがわざわざ人間のドラマーを使うという選択をしたことの意味を我々は考えなければいけません。
だからコンピュータには出せないもの、つまり人間ならではのフィーリングやニュアンスや荒々しさなどを積極的に提供出来なければダメですし、それこそがプロに求められている本当の部分だと思います。
ちなみに相手が求めているものよりもさらに数倍カッコ良い演奏を提供出来るのが一流と呼ばれる皆様。
譜面をついさっき渡されて生まれて初めて演奏する曲を2~3テイクでバシッと決めてプロデューサーを唸らせちゃうんだから、ホントもう神業ですわな。
■私の場合
とは言えそんな超絶なプロばかりではありません。実際私が関わる現場はそこまでシビアではないです。
私の場合は私のドラムの良いところも悪いところも分かってくれている気心知れたアレンジャーさんがいて「この曲は君だったら合うかも」という状態で声をかけてくれます。
だからジャジーな曲とかボサノバみたいなジャンルはそもそも声がかかりません(笑)。
オールマイティなスタジオミュージシャンの方々のような仕事は出来ませんが、自分の得意なプレイちゃんと分かってくれて信頼して演奏を任せてくれる知り合いがいるというのはとても大事なことですよ。
でもレコーディングは何度やっても慣れないなー。
あの独特な雰囲気がね^^
みなさんも是非一度レコーディングで胃が痛くなって冷や汗かく経験をしてみてください(笑)。