良いドラマーになるためのブログ

【プロドラマー・ドラム講師たいこもちのブログ ドラムネタは意外と少ないかも】

引き出しを(とにかく)増やす

求められるモノ」でも書きましたがクライアント(プロデューサー、ディレクター、アレンジャー、バンマスなど)からは演奏に対して様々な要求、要望が出されます。

どんなスーパープレイヤーでも「どんな演奏しても誰からも何も言われない」なんてことはありません。あのスティーブ・ガッドでさえ「そこはこう叩いてくれ」「スネアの音がちょっと」とか言われることがあるそうです(以前ドラムマガジンで読みました)。

なので誰からも何も文句を付けられないプレイを目指すことも大事ですが、どんな要求(要望)にもサッと応えられる対応力・順応性を持つことがとても重要になってきます。

よく「あの人は引き出しが多い」みたいな言い方をしますが、要はいろいろなパターン、フレーズ、フィルイン、ニュアンス、音色を自分のアタマの中にストックしておいて、相手の要望に合わせてそれを引き出して演奏として提示してあげられればいいわけです。

そうすると「あ、このドラマーは分かってるな」「この人は仕事が早い」と認識されて次の仕事につながります。


■対応力・順応性を高めるためにやること

ではどうやったらアタマの中にいろいろなネタをストック出来るかと言えば...

「ひたすら曲をコピー!!」

これに尽きます。

それもただコピーするのではなくいわゆる完コピ(完全コピー)を目指してください。


■完コピのやり方

1.まずは手順をコピーする
まずはパターンやフレーズをオリジナルの演奏と同じ手順で叩けるようにします。これはドラムの音が聞き取れれば出来ますし、さらにネットで動画などをチェックすればほぼ完璧に同じ風に叩くことが出来るようになります。

2.グルーブ感やニュアンスをマネる
同じ手順でパターン(フレーズ)が叩けるようになった元の演奏をさらに聞きこんでグルーブ感やニュアンスも出来る限りマネするようにします。

※専門学校で教えていた時に学生が一番出来ていなかったのがこの部分でした。

ハイハットは比較的ニュアンスの付けやすい楽器なので、重点的に取り組んで原曲になるべく近くなるようにしてみてください。

ここが似ないと同じ手順で叩いても全く違った演奏に聞こえてしまいますので注意してください。

スネアのゴーストノートの音量などもニュアンスを決定づける非常に重要な要素ですので聴こえてくる音に集中して出来る限り同じように叩けるようにしましょう。

またスネアがオープンリムショットなのか、リムショット無しなのか、の叩き分けも大切です。

この辺りのニュアンスが似るとグッとホンモノっぽくなるのでしっかり。

3.音色を可能な範囲で近づける
そもそも元の曲と自分が今叩いているドラムでは楽器や機材が違いますし、CDのドラムの音と生のドラムの音では全然違うので音色は似せることがかなり難しいです。

ただ、それでも大まかに似せることは出来ます。スネアやタムのピッチなどはチューニングで(同じ音色は無理でも)近いピッチ感に持って行くことは出来ます。

また奏法で音色を似せることも出来ます。

参考のために雑誌やネットなどでそのドラマーがどんな機材を使ってどんな録り方をしたのかなども調べておきましょう。

とにかく聞こえてくるドラムの音一つ一つに神経を集中して自分がその時出来る限界まで似るように頑張ってみてください。


■完コピの際の確認

自分なりに完コピが出来たと思っても実際に叩いている時と録音された音では聞こえ方が違ったりします

ですのでコピー作業が終わったら実際に自分の演奏を必ず録音して聴いてチェックしてください。

「おお、似てる」と思うこともありますが「あれ?こんな風になっちゃうんだ...」とギャップを感じることもあります。

けれど落ち込むことはありません。「じゃあ、こうしたらどうかな」と試行錯誤していろいろと試してみればいいのです。

それを繰り返しているうちに本物に徐々に似てくるはずです。

確認作業はコピーをする作業と同じくらい大事で、このプロセスの判断が甘いとせっかくの完コピが無駄になってしまうので手を抜かずに取り組んでください。


■ようやく引き出しに

こういうプロセスを経てようやく完コピしたパターン(フレーズ)がようやくあなたのアタマの中にストックされました。

これで欲しい時にサッと引き出しを開ければ取り出せるようになります。

クライアントから要望が出された時、自分が完コピした楽曲のリストの中にそれに近いものがあればサッと提示することが出来ますね。

でも引き出しになかったら...?

そういうことが無いように日頃からたくさんの曲を聴いてストックを一つでも多く持っておくのです。

それでも引き出しに無いものが求められたら?

その場で曲を聴かせてもらってその曲をすぐにコピー出来る能力を高めておきましょう。

完コピ癖が付いていればそれも特に難しくないはずです。


■終わりに

ただ数多くの曲をコピーしてもコピーが薄っぺらい表面的なものでは意味がありません。かと言って深くマニアックにコピーしたとしても曲数が少なければお話になりません。

深く追求しつつも幅広いジャンルを押さえておくことが大切です。

特にプロを目指す方はライブのリハやレコーディングの本番でドツボにハマりたくはないでしょうから(笑)積極的に取り組んで一つでも多くの音楽表現を引き出しにストックしておいてください。

とは言えいきなり自分が知らないジャンルをコピーするのは大変でしょうし、興味がなかなか湧かないでしょう。

最初からあまりヘビーに捉えてモチベーションが上がらない中で義務的にやってもしょうがありません。まずは自分の好きなバンドやアーティストをひたすらコピーするところからでOKです。

それが出来るようになったら徐々に幅を広げていくようにしましょう。

完コピに関しては文字で書くとものすごく大変そうですが、実際にみなさんが多かれ少なかれやっていることです。「その精度を高めましょう」というだけの話。あまり気負わずにいきましょう。

あくまで音楽なんですから「お勉強」みたいなスタンスでやるのも楽しくないじゃないですか。

「自分の中に知らない表現がどんどんストックされるというのは楽しいな」と楽しみながらやっていきましょう。