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良いドラマーになるためのブログ

【プロドラマー・ドラム講師たいこもちのブログ ドラムネタは意外と少ないかも】

好きなドラマー(3) ~イアン・ペイス(DEEP PURPLE)~

■好きになったきっかけ
中学二年生の時に聴いたDEEP PURPLEの「BURN」に衝撃を受け、それまでYMOテクノポップ)一筋だった自分は一気にロックにのめり込んだ。

そのDEEP PURPLEの看板ドラマー。

とにかく派手で手数が多くて何から何まで魅力的で一発でノックアウトされた。


■プレイ分析 ~グルーヴ編~
イアン・ペイスがグルーヴ面で語られることはあまり多くない。別にグルーヴが悪いとかいうことはないのだが、シングルストロークの速さや複雑なコンビネーションなどテクニカルな部分にスポットが当たることが多いのと、同時期に活躍したジョン・ボーナムがグルーヴで語られることが多いので相対的に扱いがそうなってしまっただけのように思う。

イアン・ペイスのビートは決して重くはないが「軽い」と表現するのも違うと思う。彼のビートの特徴はとにかくそのすさまじいまでのスピード感。まさに「Highway Star」。グイグイ突っ走っていく感じである。実際フィルインを入れる度にちょっとずつ加速して行って、曲の最後の方では相当速くなってしまうことも多い。

ただそれによって曲が台無しになることはなく、むしろ勢いが加わって結果として素晴らしい演奏になっている曲がほとんど。

※そういう意味ではDEEP PURPLEを聴くならやはりライブ盤がおススメである。

リズムパターンはシンプルなロックのパターンも叩くが、時々ものすごく高度なコンビネーションのパターンも出てくる。

個人的に最も難易度が高いと思われる曲が「You Fool No One」。これは16分音符を多用した複雑なバスドラムのパターンに、さらにバスドラムとはちょっとだけ符割りが違う16分音符のカウベルのパターンをかぶせ、さらにスネアで2拍、4拍のバックビートを入れながらゴーストノートも鳴らし、2小節毎にクラッシュシンバルのミュートを行うという、ほとんど曲芸のようなドラムパターンである。プロでもこれを長時間安定して叩くのは結構難しい。

※ミュート:叩いてすぐに残りの手でシンバルを押さえて音を止めること

そんな難しいパターンをあの時代(1970年代)のしかも「ロックドラマー」が演奏していたというのが驚異的である。

また、もはや伝説になっているが「BURN」のドラミングは通常の常識ではあり得ない。歌の入りと同時にほとんどドラムソロばりに音数を入れて埋めて行くなどというアレンジは斬新過ぎて驚くほかない。

DEEP PURPLEの曲に関しては明らかにイアン・ペイスのドラミングがあってこそ、という作品が少なくない。「BURN」もイアン・ペイス以外のドラマーが叩いていたらあれほどの名曲とはならなかったに違いない。


■プレイ分析 ~フレーズ編~
イアン・ペイスの持ち味は何と言っても高速シングルストローク。相当速いテンポでも16分音符、6連符のシングルストロークのフィルを事もなげにこなしてしまう。

スネアだけでなく、タムやシンバルを絡めたりするので、速さだけでなく移動も結構大変なのだが、映像を見ても余裕でやっているのが驚きだ。

「強力な手クセフレーズがある」というよりも高速シングルストロークで多彩にフィルを決めまくるというのが手クセと言えば手クセ。

イアン・ペイスがよく使うフレーズ
フィルやソロで良く使うのが手足のコンビネーションの3連符。

「右手→左手→右足」というパターンを曲のここぞというところで使ったり、ソロの盛り上がるところで使ったりする。このフレーズは今でも廃れることなくロックドラマーの定番であり、必ず覚えておきたいフレーズの一つでもある。

みなさんも絶対マスターしよう。

※ちなみにイアンペイスは左利きなので厳密に言うと「左手→右手→左足」という順番だと思う。


■プレイ分析 ~テクニック編~
マッチドグリップでレギュラーグリップを使っているところは見たことがない。握りはジャーマングリップで、いつも手首はリラックスしていてしなやかな動きだ。

シングルストロークがトレードマークの彼だが、ダブルストロークももちろん完璧。さらにプレスロールは本当に美しい。

ストロークテクニックのレベルの高さやシングルの速さ、質感のカラッとした感じはおそらくバディ・リッチあたりのジャズのスーパードラマー達のテクニックをしっかり吸収しているから出来るのではないだろうか。彼がどんな音楽を聴いてああいうテクニックやスタイルを身に付けたのか聞いてみたい。

手だけでなく足もかなり速いのがイアン・ペイスの凄いところ。前述の「You Fool No One」だけでなく足数が多い曲、足数の多いフィルインなども軽々とやってのけてしまう。

有名な話では「Fire Ball」という曲で唯一ツーバスを使っているのだが、「ワンバスでも出来るけど、音量が下がるからツーバスにした」というエピソード。

あの速さでワンバスが出来るというのも驚異的だし、普段全く練習をしていないツーバスをいきなりレコーディングの本番で叩いてOKテイクを出してしまうのだが、もう開いた口がふさがらない。天才とはこういう人のことを言うのだろう。

是非原曲を聴いてみて欲しい。


■最後に
自分が出会った最初のロックバンドがDEEP PUPLEであり、初めて知ったロックドラマーがイアン・ペイス。今でも彼の影響はたくさん残っているし、DEEP PURPLEの有名曲は譜面など無しですぐにでも演奏出来る。それくらい自分のコアな部分にしっかりと浸透しているのが彼のプレイ。

ちなみにDEEP PURPLE以外にもいくつかバンドに在籍したイアン・ペイスだが個人的にはゲイリー・ムーアバンドでのプレイが大好き。ビートは少し重めに変わったものの、高度なプレイは健在で本当に素晴らしかった。