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良いドラマーになるためのブログ

【プロドラマー・ドラム講師たいこもちのブログ ドラムネタは意外と少ないかも】

好きなドラマー(10) ~Vinnie Colaiuta~

■好きになったきっかけ
今でこそ大好きなドラマーだが、好きになったきっかけのプレイは実は覚えていない。ちょこちょこと音源は聴いていたはずなのだが、これといったプレイを思い出せない。

初めて演奏を見たのは「Grp Super Live In Japan '87」での映像だと思う。当時Chick Corea Elektric Bandが好きだったのでDave Weckl目当てで映像を見ていたのだが、Lee Ritenourのバックで叩くVinnieにも注目はしていた。

ライブでは両バンドの共演がありドラムバトルが繰り広げられたのだが、そこでヴィニーはウェックルを圧倒していた。

ただその凄さはおそらくドラマーにしか分からなかったと思う。実際に見に行っていた軽音楽サークルのギタリストの友達は「ヴィニーってすごいの?」と質問されたくらいだ。

私が「ウェックルよりテクニックは全然凄いよ」と言ったら驚いていた。

まだ当時は名声はウェックルの方が上で、ヴィニーは「フランク・ザッパのところにいた上手い人」くらいの認識しかされていなかったかも知れない。(あくまで個人的見解です)

その後はLAのレコーディングセッションシーンでグングン頭角を現してきて、STINGのバックバンドで叩くようになった辺りで、その地位が不動のものになったように思う。

ヴィニーの場合は一気に好きになったというよりも、いろいろな演奏を通してじわじわ好きになっていったという珍しいパターンかも知れない。


■プレイ分析 ~グルーヴ編~
シンプル系でも音数多い複雑系でも、ハードでもソフトでも、インストでも歌モノでも、ジャズでもロックでも、とにかくどれを叩いても完璧な印象がある。

基本的にはタイトで、プレイには一切の隙が無い。

SMAPの「KANSHAして」などはその良い例。キックがもうタイトでタイトでシビれます。オマー・ハキムもSMAPでよく叩いていたが、彼のしなやかで温かみのある演奏とは対照的なのでプレイの比較をしてみると面白い。

同じく対比で楽しめるオススメアルバムはPaul Youngの「Other Voices」。こちらは曲によってManu KatcheとVinnie(とマシン)で別れているのだが、マヌが柔らかいビートで気持ち良くグルーブさせるのに対し、ヴィニーはタイトにバシッと決めてくる。どちらもカッコいい。


■プレイ分析 ~テクニック編~
ヴィニーのテクニックについては書けることが多すぎてすべては書き切れないがいくつか取り上げてみたい。

・ハンドテクニック
ドラマーなら多かれ少なかれルーディメントの一部をドラムセットに応用しているが、ヴィニーの場合はその応用のレベルがハンパなく高く、あれほど高いレベルでルーディメントをマスターしているドラマーはなかなかいない。

そして元々のレベルが高いところに加えて、そのテクニックをキット全体を使ったコンビネーションのフレーズなどでガンガン繰り出すので難易度が高くコピーはほぼ不可能。

ルーディメントをキットに応用するというのはスティーブ・ガッドが先駆者だがヴィニーの場合はそれを遥かに高い難易度で具現化している。

私もヴィニーのカッコいいエッセンスを部分的に拝借するくらいで、マネすることすら難しいというのが正直なところ。

なおグリップは以前はレギュラーとマッチドを使い分けていたが、最近はほぼ9割以上レギュラーグリップを使用。ちなみにヴィニーもバディ・リッチばりに恐ろしく速く左手の指が動く。


変拍子/奇数連符
やはり特筆すべきは変拍子や奇数連符に対するスバ抜けた対応力だろう。フランク・ザッパがどんなに複雑な譜面を書いてきても飯食いながら譜面を読んで、その後完璧に叩いてしまったというのだからやはりバケモノだ。

変拍子のリズムを叩きながら奇数連符フィルを入れ、ポリリズムフレーズを織り込んでくるなど、常人には理解できないようなプレイがちょくちょく出てくる。


・Superimposed Metric Modulation
今でこそ16分音符を3つ割りにしてシャッフルビートのように聴かせるギミックは当たり前のようにやられるようになったが、これを1987年頃に「Superimposed Metric Modulation」というコンセプトとして発表していたのがヴィニー。

※実際は16分音符の3つ割りなどという単純なものではなく、もっと込み入って複雑で7連符を4つずつ取っていくといったことが当たり前のように出てくるもの。

並のプレイヤーでは演奏すら出来ないようなレベルのメソッドを若くして確立し、それを実際に演奏で使いまくっていたのだから恐れ入る。(もっともそんなヴィニーと涼しい顔をして共演出来るメンバーがいることも驚きだが)

CDやライブを聴いてもヴィニーがその辺の仕掛けをしてくると全く拍が取れなくなる。だからヴィニーの叩いている複雑系の曲はコピーする気すら起きない(笑)。


■プレイ分析 ~セッティング編~
ヴィニーが長年愛用していたヤマハを離れグレッチに移った時は驚いたが、グレッチを離れてラディックに移った時はもっと驚いた。そしてシンバルもジルジャンからパイステに移ったのも衝撃だった。

セッティングは大幅な変更はなく、10,12,14,16のオールタムセッティング。バスドラムの上に10,12が来る。タムはスタンドにセットされているか、ラックにセット。

クラッシュは3枚、ライドが一枚、スプラッシュが複数枚。特徴的なのは左手側にチャイナがセッティングされていること。これはかなり昔から変わらない。

ペダルはツインペダルを愛用。高速連打などはほとんどやらないが、フレーズの中に織り込んでくることが多い。

スネアのチューニングはプレイ同様タイト目。ウェックルがパーンとオープンなサウンドであるのに対しヴィニーはもう少し余韻が少な目でまとまり感がある印象。


■最後に
世界中の超一流ドラマーのピラミッドの頂点にいる一人。まさにミスター・パーフェクト。

そんな完璧なヴィニーなのにライブでは結構熱くなってぶっ壊れる若さをいまだに持ち合わせている。

歳を取って演奏は円熟味をましつつも一切守りに入らないその姿勢は本当に心から尊敬している。

また生で見たことが無いので是非一度生で見たい。

ベックのバックで叩くロックなヴィニーもいいんだけれど、出来ればブルーノートのような生音が聞こえる小さ目のハコがいいなぁ。


■追記
なんか2014年に「HEUER」とかいうドラムメーカーに移ったみたいです。全然知らないんですけど、そのメーカー。ただヴィニーが移籍してくるだけでものすごい知名度が上がっちゃうから、今後は注目かも知れないです。