「音楽でメシを食う」ということ(その4)
■副(複)業のススメ1
※ここで言う副(複)業とは「ドラム以外の音楽に関わる仕事」のことです
コンピュータの台頭で演奏家の仕事が減ったという話をしましたが、実際日本の音楽業界において演奏のギャラだけで食べて人はおそらく数えるほどしかいないと思います。
ほとんどのミュージシャンは本業の演奏のほかにプロデュースをやったり、アレンジをやったり、作曲をやったり、講師をやったり、複数の肩書を持っています。
もちろん仕事の自然な流れで複数の仕事をこなすことになった人もいるでしょうが、やはり自分の身を守るために将来を見据えて戦略的に取り組んでいる人もいるはずです。
私も演奏家以外にこうして講師をやったり打ち込みの仕事をやったり、過去には作曲とかアレンジの仕事をやったこともありました。
あれこれ手を広げないで演奏のテクニックを磨けという意見もあるでしょうが、いろいろなことに貪欲に手を出しておくことは収入を安定させることにもつながるのでとても大切なことだと私は考えています。
例えばもしあなたが骨折をして1か月丸々ドラムを叩けなくなったらどうしますか。入院するような病気になったらどうしますか。
恋人がお金持ちで生活に困らないくらいお金の援助をしてくれたり、共稼ぎで自分以外にも稼いでくれる人がいたり、貯金がたくさんあるようならいいですが、そうでないならその収入ゼロの期間はどうやって生活しますか。
アレンジの仕事なら自宅で療養しながら出来るかも知れません。
講師の仕事なら現場に行ければ別に骨折していても出来るでしょう。(デモ演奏は出来ないでしょうが)
作曲をする人なら過去に作曲した曲の印税が振りこまれているかも知れません。
演奏家は決められたスケジュール通りに決められた場所に行き演奏をしてナンボの仕事です。それが出来なくなったら一気に収入の道が絶たれてしまいます。
けれど他にも出来る仕事があれば少なくとも収入がゼロになることはありません。少しの間であれば食いつないでいくこともできます。
一つの収入源に依存しすぎるとそこが上手く機能しなくなった時に生活が破綻してしまうので、自分の身を守るためにも武器は一つでも増やしておくことをおススメします。
■副(複)業のススメ2
副(複)業を勧める理由はもう一つあります。それは「音楽的な面でのプラスが多い」ということです。
例えばドラマーであるあなたがアレンジャーとしても仕事をしたいと考えた場合。
我々が通常耳にする音楽は全て複数の楽器でアンサンブルが成り立っている楽曲ばかりです。ドラム単体で成り立つ曲はまずありません。
であるならばドラマーがアレンジを勉強することは非常に理にかなっています。
各楽器がどうやって絡んでいるのか。
その中でどういう位置付けにドラムがいるのか。
なぜそのパターン(フィルイン)をそこで叩くのか。
ドラムセットの内側からだけでは見えないことがたくさんあります。
アレンジをやるには当然音楽理論についても学ぶ必要があります。「ドラマーなのでコード(和音)についてはさっぱり分かりません」という人は少なくないと思いますが、コードを理解し、コード進行が分かってくると音楽への理解がより深まります。
そしてコードが分かり、コードとメロディーの絡みなどが分かってくるとそれは当然作曲にもつながっていきます。
結局音楽はどこかで結びついているので何かを習得すれば必ずそれは別の何かのプラスになるのです。
作曲も出来てアレンジも出来るドラマー。
素敵だと思いませんか。(その上収入もアップしたらなおさら素敵(笑))。
ドラムを頑張るのはもちろんですが、音楽に関することであればなんでも貪欲に首を突っ込んでみてください。仮にそれが収入に結びつかなかったとしても必ずあなたを成長させてくれます。
(その5へつづく)