良いドラマーになるためのブログ

【プロドラマー・ドラム講師たいこもちのブログ ドラムネタは意外と少ないかも】

好きなドラマー(7) ~Buddy Rich~

■好きになったきっかけ
バディ・リッチというすごいドラマーがいることはドラムマガジンなどを読んで知っていたが、あまりにもその伝説がマユツバ的な内容だったので「まぁ昔の人だからいろいろと話が大きくなってるんだろう」くらいに思っていた。

そんな折、ある教則ビデオを見ていたらエンディングに他のビデオの宣伝用の短い映像がいくつか収録されていた。その中にバディ・リッチの動画もあったので「どれどれ、どれほどすごいかチェックしてやろう」と軽い気持ちで見てみたら...

 

やられました(笑)。

 

「な、何なのこのおじさん。すごすぎるんですけど」

と、一発で虜になってしまった。

特筆すべきは彼のシングルストロークの速さ、美しさ、ダイナミクス...

あれほどのシングルストロークを打てる人は後にも先にもバディ・リッチしか知らない。

それに加えて曲をグイグイドライブさせるスピード感、軽やかなスウィング感、観客を熱狂させるド派手なソロ、そして遊び心。

完璧と言う言葉は彼のためにあるのではないだろうか。


■プレイ分析 ~グルーヴ編~
グルーヴというかスウィングだわな、ジャズの人だから。

私はジャズは専門外だが、バディ・リッチの生み出すリズムが人並みはずれていて凄いことくらいは分かる。

とにかくバンドをグイグイ引っ張っていくスウィング感。そしてどんなにテンポの速い曲でも余裕で対応してしまう技量の高さ、安定感。どれをとっても素晴らしい。


■プレイ分析 ~テクニック編~

・シングルストローク
彼のプレイのトレードマークとも言える高速シングルストローク。どんな練習をしたらこれだけ手が動くようになるのか、想像も出来ない。

単純に絶対的な速さだけで見れば、マイク・マンジーニの方が速いことは速い。瞬間速度だったらデニチェンの方が速い。

だがバディ・リッチの場合はあれだけの高速連打をしながら様々なニュアンスをつけ、ダイナミクスをコントロールし、表情豊かにシングルストロークを聞かせることが出来るのだ。ここが他のドラマーにはマネできないところ。(トニー・ロイスターJr.が良い線行っていると思う)

一説にはモーラー奏法を使っているというが、単にそれだけであれほど速く打てるわけではないと思う。フィンガーもリストも極限まで高められた技量を持ち、その上でモーラー奏法を駆使して縦横無尽なプレイを生み出しているのではないだろうか。

・左手
バディ・リッチのテクニックを語る上で欠かせないのが彼の「左手」。

彼は右手でレガートを刻みながら左手を常に細かく動かしてビートを刻んでいる。これはほとんどクセになっているのだろうが、その速さが尋常じゃないのだ。

そして速いだけでなくアクセントなども随所に入れてくるので、もう普通のドラマーではどうやっても太刀打ちできない。

左手で細かい音でプレイする時はプッシュ・プルのテクニックを使うことが多いが、このテクニックも非常に高いレベルで習得しており、速さ・持続力ともに完璧と言える。

・ソロ
基本的に高速シングルストロークを柱に組み立てるが、それ以外にも観客を魅了する様々なアイデアが散りばめられている。

タイコ間の高速移動
クロススティッキング
シンバルのみでのソロ
スティックトリック

またソロの途中で観客と喋ったり、ドラムを使って客を笑わせたり、超絶的に高い技量を惜しげもなく「客を楽しませること」に使う、まさにエンターテイナーの鑑。


■プレイ分析 ~オマケ~

彼はマクラを叩いて手首を鍛えたという(デニチェンが確かそんなことを言っていた)。跳ねないところで練習して全てのテクニックを完璧に出来れば、ドラムセットで叩いた時に楽に叩けるということらしいのだが、相当キツいっす。

あとバスドラムのペダルのバネをはずしてヒールダウンで連打してフットワークを鍛えるとか、も有名な練習方法。

是非練習に取り入れてみて欲しい。かなりキツいから。


■最後に

現在活躍中の世界中の超一流ドラマーの誰もバディ・リッチの域に達してはいないと思う。個別のテクニックだけで見ればバディ・リッチを上回る人もちらほらいる。だがドラムトータルで見て、バディ・リッチの域に達している人は見当たらない。おそらく今後も出てこないだろう。

あの人だけは多分宇宙人だったんじゃないだろうか、と思っている。