良いドラマーになるためのブログ

【プロドラマー・ドラム講師たいこもちのブログ ドラムネタは意外と少ないかも】

好きなドラマー(8) ~Steve Gadd~

■好きになったきっかけ
ガッドが素晴らしいドラマーだということはドラムマガジンなどで知っていたけれど、ちゃんと興味を持って彼のプレイを聴いたのはドラムを始めて数年経ってからだった。

最初に聴いたガッドのプレイは何だったかな。ボブ・ジェームスの「Foxie」は高校生の時に聴いてカッコいいと思った。ただSTAFFとかはなんだかやけにリラックスした音楽に感じられて全然興味を持てなかったのは覚えている。

なにせ当時はカシオペアみたいなスリリングなインストか、あとはヘビーメタルとか聴いていたので上手い人達のいぶし銀みたいなプレイには興味が持てなかったのだ。

ただ誰かのライブか何かで叩いている姿を見て「このオッサン、すげー。ただものじゃねーな」と心を奪われ、それ以降は大好きになった。でもそれが誰のライブかを思い出せない。ナベサダさんだったかな。


■プレイ分析 ~グルーヴ編~
ガッドのグルーブはもう「メチャクチャ気持ち良い!」の言葉に尽きる。音数が多くても少なくても絶対にグルーブが乱れない。インストでも歌モノでも共演者が一緒にやっていてやりやすいだろうな~というプレイを常にしてくれる。そりゃあちこちで引っ張りだこになるのも分かる。

ドラムパターンはいくつか特徴的な「これぞガッド」というパターンがあって、それを聞けばすぐに彼だと分かるし、世界中のフォロワー達がこぞって真似をした。神保さんなんかもモロにガッドのパターンやフレーズを叩いてたしね。

ガッドの動画を探せばいくつも見つかると思うので、是非「これぞガッド」というパターンをいろいろとチェックしてみて欲しい。


■プレイ分析 ~フレーズ編~
フレーズも「これぞガッド」という手クセフレーズがいくつも存在する。それがまたどれをとってもカッコいいので世界中のドラマーが真似をしたものである。

ただ面白いのは同じフレーズを同じ手順で叩いても決してガッドと同じような
ニュアンスやサウンドにならない。試してみれば分かる。

個人的に一番大きな差を感じるのは「一発の重み」。ガッドはこれがケタ違いに
すごい。スネア一発、バスドラ一発の音の迫力、説得力がこれほどあるドラマー
を他に知らない。


■プレイ分析 ~ソロ編~
ガッドのソロは名演奏が多いが言ってしまえば手クセフレーズのオンパレードであり、やっていることはほぼ毎回同じだ(笑)。ネットで調べれば「あ、またこれやってる」と気づくだろう。だがそのストーリーの組み立て方のあまりの素晴らしさと、彼の放つ音の圧倒的なパワーのすさまじさに観客は熱狂するのだ。

1989年にバディ・リッチ・メモリアル・スカラーシップ・コンサートのライブでガッド、デイヴ・ウェックル、ヴィニー・カリウタという3名のスーパードラマーが共演したことがある。

ドラムバトルの中でウェックルがテクニカルなアプローチでヴィニーに挑んで7:3で押されてしまったのに対し、ガッドはひたすら我が道を行ってブレない姿勢を貫いた。音数やフレーズの難易度では勝負せず、その音の迫力で互角以上の存在感を示したガッド。やはり唯一無二の存在である。


■プレイ分析 ~セッティング編~
ヤマハを頑なに使い続けている数少ないドラマー。セッティングは非常にシンプルでほぼ不動の4点セッティング。フロアタムを使わず全てタムで統一するというユニークなスタイルをフュージョンドラマーの間に定着させた。シンバルも3枚(+ハイハット)と少な目。

最近はツインペダルなども導入しているが、高速連打などをやるためではなく、効果的にフレーズやパターンに組み込んでセンス良く聞かせるのが彼のやり方。こういう使い方は非常に参考になる。

チューニングはおそらく私が叩いたら「なんだ?この変な音」となるような気がする。ガッドがあのタイム感であのニュアンスで叩くから成立している音とも言える。スネアはリングミュートを長年愛用している。ジャズをやる時でもあのベタベタな音でやってしまう。


■最後に
実はフュージョンやジャズを叩くガッドよりシンプルな歌モノ(例えばクラプトンとか)を叩いているガッドが好きである。実はまだ生で見たことがないので彼がお亡くなりになる前に、一度は生で見ておきたい。いや見ておかねばならないドラマーだろう。

ちなみに今この歳になってSTAFFを聴いたりすると「いいなぁ~」と心の底から思える。若い頃はこの良さ、この凄さが分からなかった。それが分かるようになったということは自分も成長したということか。

※追記
ブルーノートで生で見る機会がありました。
もうダイナミクスとかすごくて、うひゃーって感じ。

最高でした。