良いドラマーになるためのブログ

【プロドラマー・ドラム講師たいこもちのブログ ドラムネタは意外と少ないかも】

目を閉じてこそ見えるもの

ここ最近ずっと自分の演奏についてフラストレーションを抱えている。ドラムを叩いている時の邪念が多すぎるのだ。

ドラムを叩き始めた当初はそれこそわき目も振らず一心不乱に演奏していた。っていうかそうしないと叩けなかったんだけど。(笑)それから随分と月日が経ち演奏技術は当時に比べると格段にあがったにもかかわらず演奏時の集中度とか演奏後の納得度が比例していないことが多い。これはいったいどうしたことだろう。


話は変わるが、昨日は博多のライブのリハがあった。ある曲を演奏する際ベースのヒロポンが譜面を置きつつも目をつぶって演奏していた。おそらく自分がどれくらいその曲を覚えているかを確認していたのだろう。「面白いな」と思ったので自分でもやってみることにした。

演奏が始まりしばらくするといつもと違う意識でドラムを叩いている自分に気づいた。楽曲に対する集中度がいつもと比べ物にならないくらい高いのだ。クリックが、オケが、他のメンバーの演奏が非常にクリアに頭の中で聞こえている。体も流れる音楽と一体となり自然に動いている。譜面を覚えているかどうかの確認として試みた「目閉じ演奏」であったが、いつもと違う感覚で演奏している自分が楽しくなって途中からそんなことはどうでもよくなってしまっていた。

「この感覚はなんだろう」と訝しくも思いつつ興味深かったので調子に乗って次の曲もその次の曲もと、結局ライブの最後の曲までほとんど目を閉じてドラムを叩き続けてしまった。そして演奏が終わると何か不思議な達成感のようなものを感じている自分がいた。

それまでは演奏中に音に集中しているつもりでもにフォームがどうだとか次のフィルは何だとか足がうまく動かないなとかリズムがヨレてるな、とか余計な事を考えすぎていたように思う。それが目をつぶって余計な情報を遮断することによって自然と音に集中することが出来、結果として本来あるべき姿勢で楽曲に臨めたように思う。

思うに、音に携わる世界にいる自分が最優先すべきは音そのものであったはずなのにいつのまにかそれ以外の雑多な情報に惑わされすぎていたのではないかと。

話を少し広げるが、ネットや雑誌から情報を拾うことは悪いことではない。けれどそうやって目から入ってくる情報は量も桁違いに多いし内容も濃い。そして自分にとって必要の無いものも多く含まれている。やはりそういった余分な情報はどこかで遮断しなければいけないし、あまりに多すぎる情報は時に害にもなり得るということをもっともっと強く自覚しなければいけなかったように思う。

当たり前といえば当たり前の帰結だけれど目を閉じて初めて見えてきた大切な事。そこにたどり着くまでにえらく回り道をしてきたものだとちょっと苦笑いしてしまった。

ハイ、ワタクシはまだまだ未熟者です。

P.S.
映画「Ray」を見た。盲目のアーティスト、レイ・チャールズには音楽というものはどういう風に「見えて」いたのだろう。音のみで勝負した彼の音楽はただひたすら素晴らしい。