「音楽でメシを食う」ということ(その6)
■プロならではの喜び
散々プロミュージシャンの暗黒面(笑)について書いてきましたが、不思議に思いませんでしたか。
「じゃあ、この人はなぜこんなキツい思いをしてまでプロミュージシャンを続けているのだろう...」と。
それはやっぱりありきたりですが
音楽が何よりも好きだから!!
です。
そして「俺にはこれ(ドラム)しかない!」と信じているからなんですね。
ホールクラス以上のキャパの会場でライブをやったことはほとんどの人が無いと思いますが、大きな会場をいっぱいに埋め尽くしたオーディエンスから声援や拍手をもらったらどんな気分がすると思いますか。
拍手なんかパチパチパチではないですよ。ザ~ッと大きな波のような音の塊で自分のところに届くんですよ。
自分が叩くビートで何千人もの人が手を叩き、拳を振り上げて一体になるんです。
もう鳥肌モノですよ。
いつも演奏しながら感動しています。
自分がドラムを叩いた曲がラジオやテレビから流れてきたらどんな気分がすると思いますか。
「今全国で何万人もの人が俺のドラムを聴いてくれているんだな」と思ったらそりゃもう本当に嬉しいですよ。周りの人に「このドラム叩いているの僕で~す!」って教えてまわりたいくらい(笑)。
「あのアルバムのYOUさんがドラムを叩いている曲が良かったです」なんてファンの人から言われたら大感激です。とても誇らしい気持ちになります。
この感激、感動が味わいたくてプロを続けているようなものです。
これがあるからその他の苦しいことに耐えられるのです。
みなさんも一度味わったら病み付きになると思います。
プロを目指す人は是非そういうステージまで上がってきて欲しいと心から願っています。
■講師としての喜び
講師をやっている喜びというのは、やはり教え子の成長を感じられた時でしょうね。
出来なかった事が出来るようになるというのは本人もうれしいでしょうが、教えている私たちも自分の事のようにうれしいものです。
ヘタクソだったあいつが、でも人一倍頑張り屋だったあいつが、立派にプロのステージを努めるまでになったか...
そんな光景を見ると講師冥利に尽きますね。
教える仕事をやっていて本当に良かったと感じる瞬間です。
■それでもプロになりますか
いろいろ書いてきましたが、読んでみてどうでしょうか。プロを目指すのを止めたくなりましたか?
もし厳しい現実を見せつけられて「やっぱプロになるのは止めておこう」と思う人はいたって正常な判断力の持ち主です。
そういう人はプロミュージシャンではなくきちんと就職してアマチュアミュージシャンとして音楽と一生付き合う方がきっと幸せになれると思います。
ただもし、これだけプロミュージシャンの辛い部分を見せつけられてもなお気持ちが揺るがず「絶対プロになります」と即答してしまう人はちょっとアタマの回路が人と違っていると思われます。
常識的に物事を判断出来ない大バカ野郎です。
つまりプロに向いているかも知れません(笑)。
普通に考えたら「音楽で食っていく」なんていうのは非常識でリスキーな生き方ですから避けるのが当たり前。安定を求めて多くの人が公務員になりたがるこの時代にわざわざ不安定極まりない道を選ぶのですから「お前気は確かか?」と言われてもおかしくありません。
それでもなんの躊躇も無く、なんの根拠も無く「プロミュージシャンになります!」と言い切れるような人。
危険だと分かっていも、そこにしか自分の求めるものが無いのであれば迷わず突っ込んで行くような人。
そういう「自分の欲求に対してひたすら正直な人」が音楽のプロです。
ちょっとカッコよく言い過ぎましたかね。
でも多かれ少なかれミュージシャンというのはそういう人種だと私は思います。
いろいろ長々と書いてきましたがあくまでこれは私の経験に基づく一つの意見でしかありません。
だから音楽業界の全てではないし、ミュージシャンの全てでもありません。
でも「参考」くらいにはなると思うので、プロを目指している方はこれを読んで今一度自分の胸に手を当ててよく考えてみてください。
あなたの人生です。
プロを目指すも目指さないも、どう生きるかはあなたの自由です。