さらに上を目指す
2014年のゴールデンウィークの話ですが...
奥さんの実家でNHKの宝塚の特番を見ました。
「宝塚ってあの女の人が男のカッコして、なんかミュージカルみたいなことしてるやつでしょ?」
とちょっと距離を置いてしまう人もいるかも知れません。
私も実際そういう人間でした。
あんなの何が面白いのか、と。
けれど娘がファンになり奥さんがファンになり私も必然的に家でDVDなんかを見せられているうちに「これはすごい!」と思うようになりました。
今回のNHKの特番は男役トップの5人にスポットをあてた構成になっていました。
宝塚に詳しくない方のために少しだけ説明をしますと、宝塚歌劇団は「組」制をとっていまして「花・月・星・雪・宙(そら)」の五つの組からなっています。
そして各組にトップと呼ばれる人が一人ずつ存在します。その人は組の中では絶対的な存在で全ての中心。どんな劇も演目もその人を中心に構成されます。
そのトップになるのがどれくらい大変かと言うと...
まず宝塚歌劇団に入るためには宝塚音楽学校で2年間の厳しい修練を経なければならないのですがその学校に入るのがそもそも難関。
常時40倍以上の倍率です。全国からバレエ経験者、声楽経験者、ダンス経験者、スポーツ経験者で、なおかつスタイルの良い人達がわんさか集まってきます。その中でもずば抜けた成績でなければ受かりません。
2回、3回と受験してやっと受かる人も少なくありません。
そして2年間の修練の後ようやく宝塚歌劇団に配属されるわけですが、そこでも厳しいランキングが待っています。どんなに頑張っても自分より優れた人がいれば自分の序列は上がりません。
いつもステージの後ろの方で踊る「その他大勢」です。
そこで頑張って頑張って結果を出して徐々に順位を上げて、少しずつ重要な役を任されるようになって、そこでも結果を出して、実力、人気、将来性などを評価されて、ようやく組員(70人)のトップになるわけです。
早い人でもトップになるのには通常10年くらいはかかります。十数年かけてトップになる人もいます。
トップになるには年齢は関係ありません。自分よりも後輩が先にトップになってしまうこともあります。
そしてそんなに苦労してトップになっても通常3年程度で引退する(強制的に引退させられる?)ことになります。なんて厳しい世界なんでしょう。
2014年当時一番長くトップを続けていたのが星組の柚希礼音(ゆずきれおん)ですが、彼女は10年に一人の逸材と呼ばれており、5年以上トップをつとめていますがこれは異例のことです。
※ちなみにトップになれなかった人はどこかのタイミングで退団して自分の道を歩むことになります。専科と呼ばれるベテラン役者の道へ進む人もいます。
前置きが長くなりましたが、それだけ宝塚のトップに登り詰めるのは大変なんだと言うことはお分かりいただけましたでしょうか。
そのトップの人達に密着取材をした特番なんてめったにないので私は食い入るように見入ってしまいました。
彼女達が例外なくすごかったのはその努力する姿勢。すでに組のトップなのに、いやトップであるからこそのストイックなまでの勤勉さと努力を惜しまない姿勢...。
トップだから歌も踊りも余裕なのかな?なんて思ったらとんでもない。声楽の先生や演出の先生にボコボコにダメ出しをされて叱られて何度もやり直しをさせられるんですよ。
そんな中出来るまで何度でも何度でも繰り返して自分のモノにしていく。そしてさらに上を目指す。
あのチャレンジングな姿勢には本当に頭が下がりましたね。
トップは他の組員に対して圧倒的に凄まじい実力差を見せつけなければならないという責任感があります。そして何千、何万というお客さんを満足させなければならないという使命感があります。
そのプレッシャーたるや想像を絶するものがあると思いますが、そこに立ち向かっていく彼女達の姿があまりに美しくてね、涙が出ましたよ。
「自分が好きで選んだ道なのだから当たり前」
と言ってしまえば簡単ですがそれでも人間なんだから弱音を吐きたくなる時だってあるじゃないですか。
私も時にくじけそうになることはあります。
けれど彼女達のあの努力する姿勢を見せつけられたら、くじけてなんかいられないなと背筋がピンと伸びますね。
トップの人達があれほど努力して頑張っているんだから、我々はその何倍も頑張らないといけませんね。