好きなドラマー(9) ~村上ポンタ秀一~
■好きになったきっかけ
ポンタさんというすごいドラマーがいるということは知ってはいたがちゃんと聴く機会はなかった。
初めて動くポンタさんを見たのは教育テレビで放送されていた「ベストサウンド」という番組で渡辺香津美さんがゲストで出た時のこと。香津美さんのバンド(MOBO)でポンタさんが叩いていた。
第一印象は「とてもしなやかなドラムプレイをする人だな~」「フォームがきれいだな~」というくらいでそれほど強烈な印象は無かった。カシオペア命で神保彰命の自分にとってはポンタさんのすごさはこの時点ではまだ全然分かっていなかったように思う。
その後大学で軽音楽サークルに入りポンタさんが叩いている曲をコピーしたりもしたがやはりそこでもまだ大好きなドラマーという感じではなく、むしろ「ポンタさんってみんなが言うほどすごいかなぁ」という感じだった。
さらに年月が経ち自分がプロとしてデビューして1~2年経った頃、渋谷公会堂で泉谷しげるさんのライブを見る機会に恵まれた。当時泉谷さんのバックでポンタさんが叩いていたので、生のポンタさんを見るのはこの時が初体験。「まぁどんなもんかこの目で見てやろうじゃないの」と生意気にも上から目線でライブを見たのだった。
で、ライブを見た結果...
完全にやられた。
ライブでのポンタさんはもう圧巻だった。もう叩く姿がただただ美しく、繰り出されるフレーズが全てカッコよく、リズムはうねりまくって心地良かった。
こんなドラマーが日本にいるのか...
この時の衝撃は今でも覚えている。口あんぐりで言葉が出なかった。
■プレイ分析 ~グルーヴ編~
ポンタさんのプレイを分析するのは野暮というか言葉で説明するのは限界がある。ポンタさんはレコーディングでは曲によってセッティングも音色もグルーブもガラッと変えてしまうし、ライブでも場合によっては複数のセットを持ち込んで曲ごとに叩き分けたりする。したがってこれがポンタさんの型だとかグルーブだと言い切るのは難しい。あえて言うなら変幻自在に曲を彩り音を操るのがポンタさんのスタイル。
リズムを「点」で捉えずに流れで捉えているので、ビートの点が明確に感じられるカッチリした神保さんのグルーブとは対照的である。以前はよく「ったく神保彰みたいなドラム叩きやがって」みたいにネタにしていた。
■プレイ分析 ~フレーズ編~
スティーブ・ガッドほどのあからさまな手クセはないとは言えポンタさんも手クセフレーズはある。ドバラドタチタチとか(分かる人はこれで分かる(笑))
あと「あ、このリズムパターンはあの曲でも出てきたな~」とかいうこともちょいちょいある。
ただやはりあまり型にハマったフレーズと言うのは少ない。「ここでこのフレーズを入れたい」という気持ちより、あくまでも曲の流れの中で自然に出てきたフレーズということを大切にしている人だと思う。
■プレイ分析 ~ソロ編~
いわゆるテクニックで押すタイプのソロではないのでヴィニーとかデニチェンを好む人は「ポンタさんって何がすごいの?」と感じるかも知れない。
音だけ聞いているとそれほど難しいことはやっていないように感じられてしまうのだが、実際やってみるとあのニュアンスは出すのがとても難しいのだ。
ちなみに個人的にはドラム単体のソロよりも曲中のソロの方が好み。
Splashという曲でグレッグ・リーのベースに乗せて縦横無尽にソロを取るポンタさんがこの上なくカッコいい。
■最後に
ポンタさんは孤高の存在である。
誰もあんな風に叩けないし、ポンタさん以外あんな流れるようなフォームで叩く人を見たことがない。
スティーブ・ガッドのフォロワーが世界中に大勢いるのに対し、ポンタさんの場合は(世界的にあれだけ影響力のあるドラマーなのに)「ポンタさんに似てるね~」というドラマーは驚くほど少ない(私は見たことがない)。
誰もマネ出来ない唯一無二の存在。
それがポンタさんなんだろうな。
日本にこんな凄いドラマーがいて誇らしく思う。